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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2008年10月 滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)Part3

「うちの子は滲出性中耳炎だから通うようにと言われたのですけれども、いつまでたっても治らないのです。いったいどういうことなのでしょう?」

「痛みも訴えないし、熱もでない。それなのになぜ通う必要があるのでしょうか?」・・・・

滲出性中耳炎の子どもさんを持つお母さまからは、このように様々な質問を受けます。

9月のTea-breakにひきつづき、今月も滲出性中耳炎についてよくいただく御質問の続きです。

Q7: 滲出性中耳炎は治療をしないで、放っておいてはいけないのでしょうか?
A7: ・子どもさんが強く症状を訴えない。というかほとんど何も訴えない。
・治療に数か月と時間がかかる。
・10歳前後にはほとんどの子どもさんがよくなる。

などの理由で放っておいてもよいのではないかと考える親御さんもおられると思います。しかし、放置はお勧めできません。根気強く、定期的に通院することを奨励します。

 その理由は、まず滲出性中耳炎になっている時点で軽度〜中等度の難聴があります。放置すると言葉を覚えたり、コミュニケーションを学ぶ時期ですので、学習の遅れや、性格が消極的になってしまうこともあるといわれています。滲出性中耳炎と診断された時点で、小学生のお子さんでは、担任の先生にお話して教室の座席を前の方にしてもらう方がよいと思います。幼稚園のお子さんも一応受けもちの先生に滲出性中耳炎があって先生のお話や注意を聞きのがすこともあることをお話になっておいた方が誤解を受けずにすむかもしれません。

 中耳の貯留液(滲出液)の中には鼓膜を破壊する酵素やさまざまな中耳炎をひきおこす物質が含まれることもあり、ごく少数の患者さんでは将来的に、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎といったより重篤な中耳炎の後遺症を残すこともあります。これらの中耳炎では難聴が進むと手術が必要になることもあります。このようなことから、もう大丈夫となるまでは定期的に耳をみてもらい、聞こえの検査を受けることが大切です。

Q8: 滲出性中耳炎で薬をのみ、鼻から耳へ空気を通す治療(通気)を続けても中耳貯留液がなくならないときは、どういう治療がありますか?
A8:  薬を内服し、通気を行なう(保存的治療法)ことによっても滲出性中耳炎がよくならない場合は、鼓膜切開をおこないます。成人や処置をやらせてくれる子どもさんでは、外来でできます。鼓膜表面をイオン浸透麻酸で麻酔して(局所麻酔)鼓膜に2〜3oの小さい穴をあけ、ここから中耳腔にたまっている貯留液を吸いとります。鼓膜切開で鼓膜にあけた孔は数日〜1週間前後でほとんど閉鎖します。鼓膜切開を行なっても切開孔が閉鎖すると滲出性中耳炎が再発する場合は、切開孔に換気用のチューブを挿入する「チューブ留置術」をおこないます。

 ここでもう一度復習になりますが、滲出性中耳炎は「耳管」のはたらきが悪いことが原因の1つです。「耳管」は、中耳と鼻の奥(後鼻腔)を結ぶ管で、空気が出入りして中耳腔の気圧の調節をします。「耳ぬき」では耳管を使って自分で中耳腔の気圧の調節をしています。耳管のはたらきが悪いと中耳腔の気圧の調節ができず、陰圧となり、中耳粘膜からの分泌液が後鼻腔に流れ出ないままたまり、滲出性中耳炎になります。

鼓膜に換気チューブを挿入するのは、はたらきの悪い「耳管」のかわりに、中耳腔と外気との換気をさせるためです。換気用チューブが挿入されている間は、鼓膜切開を行なった場合と同様、鼓膜に換気用の孔があいていて、中耳腔に水がたまりません。換気用チューブは耳管のはたらきが戻るまで挿入されていなくてはなりません。一般的に使われているチューブは、2〜3か月たつと自然にぬけます。ぬけづらいチューブの場合は1年〜1年半以上たってから抜きます。
チューブ留置術の合併症はごく少ないですが
・耳だれ(耳漏)がでてくる。
・鼓膜に孔がのこる。

などです。また、小さい子どもさんの場合、外来での局所麻酔でこれらの処置ができない場合は、入院して全身麻酔で行なうこともあります。


詳しくは耳鼻咽喉科専門医にお尋ねください。

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