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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2009年7月 扁桃とアデノイド Part2 扁桃について

 7月は梅雨の後半に相当し、梅雨明けまでは比較的湿度の高い日が続きます。スギ花粉やヒノキ花粉の季節ほど強い症状ではありませんが、意外に鼻アレルギー症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり、鼻のムズムズ感等)を訴える方が多い時期です。初夏の花粉症の抗原としては、イネ科植物のカモガヤが有名です。また、通年性(つうねんせい)抗原のダニ、ハウスダストやカビは、梅雨の高湿度でふえるため、これらを抗原におもちの方も症状が強く出やすくなります。アレルギー性鼻炎の方は、できれば抗原を調べるための血液検査を受けて御自身の原因抗原を知り、対策をたてることをお勧めします。

 今月のお話は「扁桃とアデノイド Part2、扁桃について」です。ここでいう「扁桃」というのは通常、「へんとうせん」と呼ばれる、のどの奥の左右両側にある部分、先月のコラム(2009年6月コラム)では「口蓋扁桃」と書かれた部分です。

1:扁桃肥大

子どもさんが学校健診で「扁桃肥大」といわれ、びっくりした、どうすればよいだろうととまどった経験のある方も少なくないと思います。まず、扁桃という臓器はリンパ臓器であり、その大きさに年齢的な変化があります。つまり、2〜3歳ごろから大きくなりはじめ、7〜8歳で最大になります。その後は徐々に小さくなってゆくという経過をたどります。しかし、個人差はもちろん存在し、遺伝や体質、反復する感染など、影響を与える要因はいくつかあります。
(1)扁桃肥大の程度が年齢的な変化の範囲内である場合。
(2)左右の扁桃がのどのまん中でぶつかるぐらい大きい場合でも、日常生活で特に問題がない場合。
これらの場合は手術で扁桃をとるということはしません。「日常生活での問題」というのは具体的には、

○扁桃が大きいために食物をのみこみづらい場合。このような子どもさんでは食事に時間がかかります。体重がなかなか増えない子どもさんの中には扁桃肥大が原因の方もおられます。

○扁桃が大きいために呼吸しづらい場合。大きな扁桃がのどの空気の通り道(気道)を狭くし、連日の大きないびきや、無呼吸発作と呼ばれる、寝ている時に一時的に呼吸が止まる状態がある場合。良質な睡眠がとれないと、日中眠くなったり、また子どもさんは眠気をあまり訴えず常に不きげんだったりすることもあります。また夜尿をひきおこすこともあります

逆に言いますと扁桃の大きさが見た目あまり大きくなくても、呼吸やのみこみに問題がある場合は日常生活のしやすさ、心身の発育発達を考慮して、扁桃をとる手術を考えます。
夜の連日の大きないびきや、睡眠時無呼吸を訴える場合は、扁桃(口蓋扁桃)の肥大だけでなく、アデノイド増殖症を伴う場合が多く、手術では扁桃だけでなく、アデノイド切除もおこないます。

以上をまとめますと、学校健診で「扁桃肥大」と記された紙をもらってきてもびっくりしたり、あわてる必要はありません。耳鼻咽喉科を受診し、手術で扁桃を摘出する方がよいかどうかをじっくり相談してみて下さい。

2:子どもさんで急性扁桃炎をくり返す場合

子どもさんが扁桃を腫らす、つまり、急性扁桃炎になることはよく見かけられます。ではどのような場合に、手術で扁桃をとることを考えなくてはいけないでしょうか。急性扁桃炎になっても安静にしていたり、薬をのんで短期間で発熱やのどの痛みなどの症状がなくなれば問題ありません。扁桃炎のために手術が必要になる場合は次のような場合です。

(1)慢性扁桃炎
扁桃の炎症が慢性的に続いている場合です。つまり、慢性的にのどの痛み、発熱、口臭などが続いている場合。

(2)習慣性扁桃炎
1年に3〜4回以上高熱、強いのどの痛みをくり返し、たびたび学校を休まなくてはいけない場合。

(3)扁桃周囲炎(へんとうしゅういえん)、扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)
扁桃の炎症である急性扁桃炎から扁桃の周囲の炎症である扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍などの重症の炎症をおこした場合。扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍では、全く食事がとれないほどのどが痛くなったり、のどのはれが強く、呼吸しづらくなることもあります。

(4)病巣感染症
病巣感染症という聞きなれない言葉があります。病巣感染症とは身体のどこかに慢性の炎症性の病巣があり、そこの病巣の症状はほとんどないか、軽いのに、そこから離れた身体の別の臓器に障害が二次的に現れてくるという病気です。病巣感染症の「病巣」として大事なものが扁桃です。扁桃病巣感染症の二次疾患としては次のようなものがあります。

○掌蹠膿庖症 (手のひら)
○IgA腎症  (腎臓)
○慢性関節リウマチ  (関節)
○不明熱  (全身の発熱)
○心内膜炎  (心臓)
(  )内は二次疾患の場所ですが、扁桃からははなれています。
病巣感染症の原因は、免疫反応と考えられています。

(1)〜(4)でも扁桃をとらないこともありますし、扁桃を手術でとっても(4)が改善しない場合もあります。手術を考えられるときは、耳鼻咽喉科やそれぞれの領域の専門医に相談し、手術のメリットとデメリットの説明を納得いくまで聞いてから決めて下さい。

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