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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2009年8月 扁桃とアデノイド Part3  アデノイドについて

 海や山に、皆様夏を満喫なさっておられることと思います。今月は扁桃とアデノイドに関するお話の3回目で、主にアデノイドについてです。 アデノイドの手術は、主に子どもさんのアデノイド増殖症(あるいは単にアデノイドと呼ばれることもあります。)に対して行なわれるアデノイド切除術です。アデノイド切除術の手術の適用には次のようなものがあります。

(1)アデノイド増殖症が原因で鼻づまりがひどく、口呼吸が著しい。
(2)滲出性中耳炎や急性中耳炎をくり返し、なおりづらい。
(3)睡眠時無呼吸症候群がある。

(1)アデノイド増殖症が原因で鼻づまりがひどく、口呼吸が著しい。
アデノイドは鼻の奥にありますので、アデノイド増殖症でアデノイドが大きいと、鼻の奥で空気の通り道(気道)が狭くなり、鼻づまりをひきおこします。鼻がつまると口呼吸をするようになり、口をポカンとあけた顔つき(アデノイド顔貌)になります。 以前にもこのコラムでとりあげたこともありますが、人間の生理的な呼吸は「鼻呼吸」です。しかし、鼻づまりが原因で鼻呼吸ができないと、仕方なく、無意識のうちに「口呼吸」になります。しかし、鼻呼吸の方が口呼吸よりずっとメリットは大きいのです。

○鼻呼吸をすると、吸いこむ空気に適度の温度と湿度を加えることができ、体にやさしい状態にして肺へ送りこめる。

○鼻呼吸では吸いこむ空気の中に含まれているごみや細菌を、鼻の入口の鼻毛でとりのぞいて、きれいにして、のどや肺へ空気を送ることができる。

○鼻呼吸では、外気のにおいを知ることができる。よいにおい(花、コーヒー等)を楽しむことができますし、また悪いにおい(食物の腐敗、化学物質等)で危険な情報を知ることができる。

これらのことが口呼吸ではできません。鼻呼吸の原因がアデノイド増殖症である場合は、アデノイド切除術で口呼吸を生理的な鼻呼吸にもどすことができます。

(2)滲出性中耳炎や急性中耳炎をくり返し、なおりづらい。
アデノイド増殖症の子どもさんでは、滲出性中耳炎や反復性中耳炎(急性中耳炎をくり返す)になりやすいといわれています。これは、アデノイドが中耳炎の病原菌のすみかになっているからです。さらにアデノイドの病原菌は、鼻炎、副鼻腔炎もひきおこし、慢性化させます。鼻炎や副鼻腔炎は滲出性中耳炎や反復性中耳炎の原因となります。

(3)睡眠時無呼吸症候群がある。
アデノイド増殖症は子どもさんの睡眠時無呼吸症候群の主な原因と考えられています。症状としては睡眠時の激しいいびきと無呼吸、昼間の眠けなどです。このような子どもさんでは、無呼吸発作のために睡眠が浅く、夜中に突然目をさましたり、夜泣きや夜尿の原因にもなります。また、注意力が散漫で、落ち着きのない行動を示すことも多くなりがちです。

以上のように口蓋扁桃摘出術(へんとうせんの手術)とアデノイド摘出術にはそれぞれの手術適応がありますが、重なる場合は、両者をいっしょに行ないます。たとえば睡眠時の呼吸障害がある子どもさんでは、口蓋扁桃肥大とともにアデノイド増殖症を伴う場合が多いため、両側口蓋扁桃摘出術とアデノイド切除術を同時におこないます。

■扁桃やアデノイドの手術の術後の問題点
術後の問題点として親ごさんが心配されるのは、まず免疫のはたらきです。
しかし、全身の免疫能力は5〜6歳頃にほぼ完成するので、5〜6歳以上であれば扁桃せんやアデノイドの手術をおこなっても、すぐに免疫力が低下して感染症になりやすいということはありません。たとえ5〜6歳になっていなくても、扁桃肥大やアデノイド増殖症が原因の呼吸障害、睡眠障害があれば手術を考えます。
扁桃摘出術やアデノイド切除術の手術後早期の合併症としては、一般的な術後合併症と同じで、出血や感染症などがあります。
これらの他に、しばらくして出現する合併症に、のどの違和感(半数以上で認められます)や構音の異常(つまり声が若干変化する。これは稀です)などがあります。しかし、このような症状は年月が経過すると減少する傾向があります。
どのような手術でも、手術を受けることによるメリットとデメリットは必ず存在します。私共耳鼻科医はメリット(手術の有用性)がデメリット(手術の合併症)を上回る場合に、患者さんへ手術をお勧めしますが、患者さんも納得がゆくまで説明を聞いてから手術を受けるように心がけて下さい。

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