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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2014年8月 乗り物酔になりやすいのですがどうしてでしょうか?
        どうやって防げばよいのでしょうか?

 ことしももう折り返し点を過ぎました。1月に何か目標を立てた方は、少しでも目標に近づいていますでしょうか。
今回は夏休み中ということもあり、乗り物酔をテーマにしました。以前(2010年7月のコラムはこちら)にも一度、乗り物酔(動揺病)をとりあげました。それにもう少し加えさせていただきます。

乗り物酔って、本当に不愉快ですよね。特に、休みで、みんなで乗り物に乗って出かける最中におこるので、楽しい思い出がつらい思い出になってしまう可能性もあります。特に子どもたちはかわいそうです。乗り物酔は子どもさんに多く、成長するにつれてなぜか減ってゆきます。でも私自身も、この歳になっても船酔はします。つまり、日常、体験することがないような刺激(船の揺れや自動車での山道走行、遊園地のコーヒーカップなど)が体に入ってきた時、刺激情報処理の能力が脳内になく、脳内で情報処理の混乱をおこします。そして起こる症状は自律神経症状で、体に対するストレスによってもたらされる反応です。

軽い緊張の時は、心臓がどきどきしたり、手に汗をかくことがありますが、
それが徐々に
  ↓
血圧の上昇、筋緊張、口渇
  ↓
胃液分泌亢進、腸管運動の亢進
  ↓
便意、冷汗、悪心

とエスカレートしてゆきます。乗り物酔の症状はどれも交感神経の症状です。症状を安定させるには、副交感神経を優位に保つ必要があります。

 さてそこで予防する方法です。

①酔い止め薬を服用する。小児用の酔い止め薬は多数市販されています。酔い止め薬を乗り物に乗る30分位前に服用します。酔い止め薬は眠気をもよおすため、乗り物の動き刺激の感覚を弱め、また嘔気もおさえ悪心症状を抑えてくれます。乗り物に乗ったら寝てしまうことが良いでしょう。

②前日は睡眠を十分にとる。体調を整える。

③移動中は読み物をしない。下をむかない。飲んだり食べたりしない。

 そして、酔わない体を作ることはできるのでしょうか? できます。

 簡単に言ってしまいましたが、親ごさんもいっしょに「酔わない体作り」を実践してみて下さい。しかし、絶対に酔わないか?と尋ねられれば、それは無理です。少しずつ時間をかけて始めてみましょう。中学、高校と酔いやすい人の数は減少してゆきましたよね。つまり、体に対して動きの刺激と動くものを見るという刺激を受ける機会がふえてくると、しだいに酔わなくなってきます。酔いやすいからとの理由で乗物などの動きや、動いているものを見るという刺激を脳に与えなければ、脳はそのような刺激に対してまったく教育されず、したがって対応できる体にはなれません。つまり、いつまでたっても乗り物に酔いやすいのです。

 動きの刺激に対応できる体(つまり脳)を作るためには、あらゆる刺激をできるだけたくさん経験させることです。小さいころから刺激を与えることが効果的です。できるだけ楽しみながら長く続けられるものがよいでしょう。

 まず、乳幼児期からブランコやシーソーに、危険がないように親に抱えてもらい、親もいっしょに安全に遊ぶことから始めます。ゆっくり揺れる刺激から始めます。しだいに刺激の強さや種類をふやしてゆきます。ジャングルジムや地球回転ジムでぶら下がったり、逆さになったり、回転したりしていろいろな刺激を体験してもらいます。そして最後に自動車や電車、船、遊園地などの乗物にも乗るようにします。

 こう書きつらねてみますと、公園やアスレチック、野山での遊びが酔わない体作りに大切であることがわかると思います。つまり、外からの動き刺激に対応できる脳にすることが大切です。怖がらないようなゆっくりした動きの刺激から徐々に慣れ、時間をかけてしだいに刺激の強さを強め、慣れてもらいます。急に強い刺激を与えこわい印象がのこり、恐怖心を与えるとそれ以上続けることができなくなりますから、くれぐれも「ゆっくり、徐々に」です。

 ここに書いたことは残念ながら早効性のあるものではありません。また一度に長時間行うのではなく、毎日少しずつ根気よく続けて下さい。

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