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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2016年10月 耳管開放症について

10月になりぐっと秋も深まってまいりました。特に朝・夕は涼しいというよりは寒さを感じます。季節のかわりめを皆様はいかがおすごしでしょうか。
 今回は「耳管開放症」についてのお話です。耳管開放症ということばは聞きなれないことばだと思われますが、実は2010年9月「耳閉感について Part2(中耳が原因の場合)」のこの欄で一度ふれたことがあります。耳閉感を感じる疾患のうち、中耳が原因の場合、ということで一度、少しだけふれました。

 まず「耳管」って何でしょうか。耳管は鼻の奥と中耳腔をつないでいる管です。大気圧と中耳腔の圧を同じにするためにあります。ふだんはその存在すら気になりませんが、たとえば飛行機の離陸や着陸の際にぱっと開いて耳閉感がとれるとほっとします。かぜをひいている時に飛行機にのってなかなか耳管がひらいてくれないで、耳が痛くなってしまったことのある方もいらっしゃると思います。これは耳管がなかなかひらかない場合で、「耳管窄狭症」といいます。それでは、耳管がひらいている状態がずっと続いていればよいのかという疑問がわきます。それもやはり都合がよくないのです。こちらは「耳管開放症」と呼ばれます。つまり「耳管」は通常は閉じていて、必要な時はパッと開かなくてはならない管なのです。

さていよいよ耳管開放症ですが、耳管開放症とは、耳管が解放されたままの状態になり、次のような症状がでてきます。

@耳閉感

耳がボーっとする。耳がふさがったかんじがする。耳の中に水が入ったかんじがする等、いろいろないいあらわし方をされます。耳管狭窄症でも同様の症状がみられます。開放症と狭窄症では病態は全く逆なのに、症状が同じというのはややこしいですね。

 

A自声強調

自分の声が響いてきこえます。これも耳管狭窄でもみられます。自分の声がひびいてきこえるため、自分で、どのくらいの声で話せばよいのか、今どのくらいの声を出しているのかわからなくなり、特に他の人と話している時に困ります。大変つらい症状です。

 

B自分の呼吸音が耳にひびく

自分の呼吸音(鼻呼吸)が耳にひびいてベコ・ボコきこえます。

 どういう方がなりやすいかというと、急激な体重の減少(ダイエット)があったり、疲れた時、睡眠不足の時に起こりやすくなります。
かなりやせぎみの女性が多い印象です。ただ同じ身長・体重でも耳管開放症になる方とならない方がおり、「急激な」というのがポイントかなと思います。あと妊娠中、妊娠初期におこりやすですが、出産すればもとにもどります。

 耳管開放症の診断法としては他の病気(耳管窄狭窄、突発性難聴などなど)との鑑別も必要なので、聞えの検査をひととおりして、問題なければ最後に外来のベッドに横になってもらいます。すると、その瞬間、症状がなくなってしまうのです。でも起き上ってもらうとまた症状が出現します。けっこうドラマチックです。つまり横になると、耳管の粘膜が充血して腫張し、開いていた耳管が閉じるのです。とってもデリケートですね。

 耳管開放症の治療法は実は決定的なものはありません。もし可能であれば体重をほんの少し増やしてもらうと、いつのまにか不快な症状が消えてくれます。内服薬としては加味帰脾湯(かみきひとう)という漢方薬を内服してもらいます。

 実は私も耳管開放症ぎみで、時々耳閉感を感じます。何か聞こえ方が変だなと違和感を感じましたら、一度近くの耳鼻咽喉科を受診して下さい。

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