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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2018年10月 認知症の原因としての難聴という問題

 ことしの夏は皆様もよく御存知のように大変な猛暑でしたので、涼しい秋の訪れが待ち遠しく感じられます。皆様お元気におすごしでしょうか。

 今回は、認知症の原因としての難聴という問題です。2017年の国際アルツハイマー病会議で、「認知症のうち約65%は個人の努力では予防できないが、約35%は予防、修正が可能な要因により起こると考えられる。」と報告されました。そして、35%の予防できるリスク因子は以下の9つです。

若年期 15歳以下の低教育 8%
中年期 肥満 1%
  高血圧 2%
  難聴 9
老年期 糖尿病 1%
  社会的孤立 2%
  運動不足 3%
  うつ 4%
  喫煙 5%

 たしかにこれを見ますと「難聴」は認知症の原因の9%を占め、予防できる要因のなかで全年齢を通じて最も大きいリスク因子です。65%はどうにもしようがないが、35%は気をつければどうにか避けることができるという希望でもあります。

 では中年期の難聴にならないためにはどうすればよいでしょうか。まず聴力の経過のあらましは次の様なものです。
聴力は、早い方ですと30〜40歳代から低下しはじめます。ただ、低下するといっても日常生活ではあまり使われていない高音域から低下しますので、たとえ低下していても御本人は自覚しないと思います。

 会話をしたり、テレビを見たり電話をかけたり等の日常生活でよく使うのは500Hz〜2000Hzです。これより高い4000Hz〜8000Hzは生活ではほとんど使いませんが、でも聞こえた方がよいこともあります。4000Hzが低下して困ることは、家電製品のアラーム音(ピッ ピッ ピッ)がきこえづらくなることです。人間ドックの聴力検査は、1000Hz(低い方の音)と4000Hz(高い方の音)の2つの音をしらべます。1000Hzは生活で最もよく使う音。4000Hzは工事現場や工場などの騒音環境で低下する音です。

 そして60歳代になると4000Hz〜8000Hzがほとんどの方で低下しはじめます。高音域が低下すると、聴力検査のグラフではちょうど右肩下がりになります。でも500Hz〜2000Hzが保たれていれば毎日の生活ではほとんど不自由しません。ただ、70歳代〜80歳代になるとしだいに高音域の低下が中音域に及んできて、500Hz〜2000Hzも低下してくるため、何かと不自由がでてきます。聴力の経過はこのようなものですが、これらは遅かれ早かれ誰でも、年齢が上がると経験はします。ですから今ある「きこえ」を大切にしていただきたいと思います。

 では、「きこえ」はどういう時にそこなわれるでしょうか。まず一般の方が遭遇するのは騒音です。うるさい音を聞きつづけていると聴力は4000Hzを中心に低下します。先にふれた、工事現場やうるさい工場の他に、ロックコンサート、パチンコ屋さん等です。工事現場やうるさい工場では、耳栓着用が義務づけられる事もあります。ただロックコンサートやパチンコ屋さんでは耳栓をつけることはほとんどないと思いますが、うるさいなと感じたら、その時はティッシュペーパーをまるめたものでもよいので何か耳に入れて下さい。不十分ですがやらないよりはましです。イヤホンで音楽を聞く方、くれぐれも音量を低めにしましょう。

 この他になにか病気で難聴になることもあります。たとえば特発性難聴やメニエール病などですが、これらは急に聴力が低下するので、御本人が早く気付くと思います。
また、慢性中耳炎などで以前から難聴があった方は、以前からの難聴に加齢性難聴が加わります。

 こうやって「きこえ」を大切に扱っていてもいつかは低下してゆきます。
加齢現象が加わるからです。これは加わるのが早いか遅いかの違いはありますが、だれにでも訪れます。そしてそうなった時に使うのが補聴器です。補聴器を使えば、たとえば「テレビの音が大きくてうるさい。」という家族の苦情も和らげることができます。また、老年期の危険因子にあった社会的孤立も防ぐことができます。そして、補聴器を使いはじめる年齢ですが、なるべく早くから使いはじめる事をお勧めします。「最近、聞こえにくいな」と感じたら早めに耳鼻咽喉科で聴力検査をしましょう。たとえ補聴器を使うほど聴力が低下していなくても補聴器かなと思って聴力検査をやった方は1年に1度は詳しく聴力を調べることを習慣にしましょう。耳鼻咽喉科では先に述べた健康診断で行う1000Hzと4000Hzの音以外の音(もっと低い音やもっと高い音)も調べてもらえますし、場合によっては言葉の検査もやってもらえます。聴力はけっして良くなることはありませんが、現在の聴力がどのくらいなのかを知っておくことは必要です。

 聴覚は小さい頃から、あってあたりまえという空気のような存在です。嗅覚と同じですね。でも年齢が上がって少しづつ失ってゆくと、その大切さが身にしみます。皆様も今ある聴力をなるべく長く保つようにして下さい。

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