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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2007年1月 「耳管」について

新年明けましておめでとうございます。「新春」とはいえ、寒い日が続いていますが、皆様いかがおすごしでしょうか。

さて、今月は「耳管」についてのお話をします。「じかん」と読みます。耳管といわれても、ピンとこない方、
 ・耳管って何?
 ・耳管ってどこにあるの?
 ・耳管って何をするの?
 ・「時間」のまちがいじゃないの?

と一瞬、考えた方も多いのではないでしょうか。

 耳管は上咽頭(鼻の奥、のどの上の方)と中耳腔をつなぐ管です。成人ですと長さ3.5cm。はたらきは中耳腔内と外気の気圧の調節をすることです。つまり中耳は耳管を介して外気に通じているのです。ふだんは閉じていて、気圧の調節をするとき(ツバを飲み込んだり、あくびをするとき)だけ一瞬ひらきます。耳管は外からは見えませんし、普通、中耳腔の圧の調節も無意識にしていることが多いので、耳管の存在を自覚することは通常あまりありません。たとえば中耳腔圧と外気圧が異なって、耳がつまるかんじ(耳閉感)を感じると、人は無意識のうちにツバを飲み込んだり、あくびをしたり、場合によっては鼻をつまんで力んで耳を通そうとします。高層ビルの高速エレベーターにのって上昇する時のことを考えてみて下さい。新幹線がトンネルの中に入った時も同じです。皆さんは意外と耳管の御世話になっているのです。

 しかし、もし耳管が気圧の調節ができなくなったら、つまり開かなくなったらどうなるでしょうか。ツバを飲み込んでもあくびをしても中耳内腔の圧の調節ができない状態を耳管機能不全(耳管狭窄症)といいます。実は、これはなかなかうっとうしい状態です。痛いとか苦しいというわけではないのですが、気が重い状態です。耳管機能不全の例をあげてみましょう。

 ○かぜをひいて、鼻汁が多いときに、耳がつまったように感じるとき。

 ○かぜをひいて飛行機に乗り、離陸や着陸のときに耳抜きができないとき。

 ○スキューバーダイビングで、耳抜きができないとき。

など、意外と身近にあります。今月は、1年中で最も寒さがきびしい1月で、かぜ気味の方も多いでしょうから、まず、これから始めます。

 かぜをひいたときに耳がつまったように感じるのはどうしてでしょうか?

 「かぜ」といいますと、どうしても、のどが痛い、鼻汁がでる、咳がでる等の症状に目が向きますが、実は鼻の奥の深いところ、耳管にも影響がでています。はじめに述べましたように、耳管は中耳腔と鼻の奥(上咽頭)とをつないでいて、通常は閉じていますが、嚥下時などに一時的に開いて、中耳腔と外気の気圧の調節をします。

 しかし、かぜをひくと耳管の鼻側の出口(上咽頭の耳管開口部)の粘膜が炎症で脹れたり、分泌液が付着したりして耳管が開きづらくなります。ツバをのみこんでも、あくびをしても開かずに、中耳腔と外気の気圧の調節ができません。

 これが耳管機能不全(耳管狭窄症)です。中耳腔の圧の調節ができないと、中耳腔内が陰圧となって耳がつまった感じがします。さらにこの状態がひどくなると、中耳粘膜から滲出液が出てきて、中耳腔にたまり、「滲出性中耳炎」になります。

 滲出性中耳炎は小児に多く、「中耳炎」であっても急性化膿性中耳炎とは異なり、耳が痛かったり、発熱したりしないため、子どもさんは何も訴えません。気づかないうちに聴力が低下していると、幼稚園や学校で先生のお話が聞こえていないことがあったり、幼児でことばを正しく覚えるのがおそくなることもあります。

 鼻汁が長く出ている場合や、聞こえが少し悪くなったかな(呼んでも返事をしない、テレビの音を大きくする等)と疑われる場合は耳鼻咽喉科医の診察を受けて下さい。

 かぜが原因の耳管狭窄症の場合は、かぜの治療が主となります。特に鼻の治療が必要です。場合によっては鼻から耳に空気を送って(耳管通気)中耳腔の陰圧を取り除く治療をおこなう場合もあります。「変だな」と思ったら、早めに耳鼻咽喉科を受診して下さい。

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