Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話
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○ 2007年5月 子供のガラガラ声について(学童嗄声)
先月にひきつづいて声のお話です。少し具体的なお話になります。
今回は「子どものガラガラ声」についてです。
子どもさんのガラガラ声、かすれ声を「学童嗄声」と呼びます。スポーツ好きな元気な男の子に多いですが、おしゃべりな女の子にもみられます。原因で最も多いのは「声帯結節」と呼ばれる病変です。左右両側の声帯に対称的にできる小隆起(タコ)です。声の使いすぎによりできます。元気で活発なお子さんなので、本人も嗄声を気にしないし、周囲のおとな(学校の先生や両親)も「そういう声なんだ。」と妙に納得してしまいがちです。たしかに音楽の時間に歌う時に、高音が出ないということの他にあまり困ることはないと感じるかもしれません。
しかしちょっと待って下さい。魅力的な声というのはもっと大事にされてもよいのではないでしょうか。ハスキーボイスが個性となっているすてきな大人もたくさんいますが、私個人としてはよく響く、とおる声の方が好ましいと思います。かすれて低くなった子どもさんの声は聞いていてかわいそうです。
Q:子供さんの声がガラガラ声になってしまった時はどうすればいいでしょうか?
A:
1週間ほど様子をみて下さい。良くなるようでしたらそのまま観察して下さい。変らない、または悪化するようでしたら、ぜひ耳鼻咽喉科を受診し、詳しく声帯をみてもらって下さい。
さて、子どもさんの嗄声が不幸にも「小児声帯結節」と診断された場合、治療はどうするのでしょうか。「小児声帯結節」の治療は原則として保存的治療です。声帯に負担をかけないように声の使い方に注意をします。
■声の使い方の注意点
・大きい声を出さない。
・力んで発声しない。
・どならない。
・長時間連続してしゃべらない。
・奇声を発しない。
・運動しながら発声しない。
・うるさい所でしゃべらない。(知らないうちに声が大きくなります。)
学童に嗄声の多いことは必ずしも日本だけの事ではありませんが、諸外国に比べ一般的に日本の子供は、大声で騒ぐ傾向が強いことが古くから指摘されております。確かに日本では、大きな声をだして遊ぶ事は「元気があってよろしい!」というイメージがあり、特に近年スポーツ振興がうたわれ、それにともないスポーツで大声をはりあげる子供が増えております。
子どもさんは病識がないため、声の濫用を控えることはむずかしい場合も多いでしょう。でもだからといってすぐに手術的治療を行なうわけではありません。「小児声帯結節」は男児では変声期前後に、女児では初潮期前後の第二次性徴期に自然治癒することが多く、思春期をすぎれば9割以上は治癒するといわれています。ですから思春期までは待ちます。例外的に国語の朗読ができない、歌が全く歌えないなどの高度の嗄声の場合は手術的治療(手術切除)もあります。
いずれの治療法も子どもさん御本人が十分納得することが大切です。
まずは「小児声帯結節」を作らないように周囲のおとなが気をくばりましょう。
1週間ほど様子をみても改善しないようでしたら耳鼻咽喉科を受診して下さい。
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