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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2008年8月 滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)って何でしょうか?

「中耳炎」と聞いて、皆さんは、まず何を頭に思い浮かべますか?

○耳が痛くなる。
○高熱がでる。
○耳だれがでる。
○夜中に急になる。等々。

 これらはいずれも「急性中耳炎」の症状です。急性中耳炎は名前のとおり、急に始まり、激しい耳の痛みや耳だれ等を訴える耳の病気です。原因としてはかぜ(急性上気道炎)がきっかけのことが多いです。もちろん急性中耳炎は幼稚園〜小学校のお子さんがかかりやすい中耳炎のひとつです。しかし、もう一つの中耳炎、滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)も忘れてはなりません。

滲出性中耳炎は

○耳が痛いわけではありません。
○高熱が出るわけではありません。
○耳だれも出ません。
○夜中に急におきることもありません。

ではどのような症状がみられるのでしょうか。

○まず、聴力が低下します。
○ 耳がふさがったかんじ(トンネルの中に入ったかんじ)が続きます。

 つまり、滲出性中耳炎というのは、耳は痛くないのに聞こえづらくなる中耳炎です。ここで急性中耳炎と滲出性中耳炎は全く別の病気という印象を持つ方が多いと思います。しかし実は急性中耳炎が十分に治らず、長びいて滲出性中耳炎になることが多いのです。このため、滲出性中耳炎は急性中耳炎の治りそこないといわれることもあります。 滲出性中耳炎になりやすい、くり返しやすいお子さんもいらっしゃいます。

たとえば・・・

○慢性副鼻腔炎がある。
○アレルギー性鼻炎がある。
○アデノイド増殖症がある。
○鼻すすりの癖がある。  などです。

 鼻がズルズルしていたり、つまっている状態と考えていただければよいでしょう。滲出性中耳炎は4〜8歳に多いのですが、大体の経過は、10歳前後にはよくなり、後遺症として難聴をおこすことは少ないといわれています。しかし、いずれ治るからといって放っておくと数か月〜数年間は難聴が続いていることになり、学校での授業等、日常生活でも支障をきたしてしまいます。学校の検診で滲出性中耳炎と指摘されたり、親御さんが子どもさんの聴力に疑問を持ったときは必ず耳鼻咽喉科を受診して治療を受けて下さい。子どもさんは「耳が聞こえづらい。」「耳が変だ。」という訴えをしないことも多いのです。すると大人に気づかれないまま、治療を受けないまま何か月も滲出性中耳炎の難聴が続いてしまうことがあります。周囲の人々とコミュニケーションをとる、あるいは学習するという時、相手の言っていっていることがわかる、理解できるという耳からの情報はとても大切です。滲出性中耳炎をくり返している小さい子どもさんでは、言語発達が遅れてしまうこともあるといわれています。

 どの病気でも同じですが、滲出性中耳炎も初期治療が重要で、初期に充分な治療を行っていると反復しても難治化しづらく、逆に放置しておくと中耳腔内の炎症が長びいて、だんだん悪化してゆきます。

 先ほど、「後遺症として難聴をおこすことは少ない。」と書きましたが、中には癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎などの重篤な中耳炎へ変化してゆき、難聴を残してしまうお子さんも、実は、少数おられます。ですから耳鼻咽喉科で「もう大丈夫ですよ。」と言われるまで必ず治療を続けて下さい。

■治療は・・・

○炎症をおさえる薬をのんでもらう
○「通気」といって鼻から耳へ空気を通す。
○鼻の治療。
○場合によっては鼓膜切開をおこなって、中耳腔にたまっている液体をとりのぞく。
○鼓膜切開をおこなって中耳の液体をとりのぞいてもまたすぐにたまってしまう場合は、鼓膜に換気のための小さいチューブを入れることもあります。

 一般的に滲出性中耳炎は急性中耳炎から移行した病気ですが、はじめの急性中耳炎だけで治らないで、滲出性中耳炎に移行したということから、中耳炎が治りにくい子どもさんと考えられます。そして今後も中耳炎をくり返しやすいと考えられます。滲出性中耳炎と診断されたら、必ず充分な治療を受けて、そのつど完全に治して下さい。定期的に聴力検査をおこなって、聞こえをチェックすることはとても大切です。中には治療が長びく子どもさんもおられますが、根気よく治療を続けて下さい。

 滲出性中耳炎は、急性中耳炎ほど名前になじみがなく、かつ、痛がるなどして親御さんを困らせることが少ない中耳炎であるため、治療が軽視されてしまうこともあります。しかし子どもさん本人の聞こえにとっては大切な問題なので、ぜひ完治させて下さい。

 

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