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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2008年9月 滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)Part2

「うちの子は滲出性中耳炎だから通うようにと言われたのですけれども、いつまでたっても治らないのです。いったいどういうことなのでしょう?」

「痛みも訴えないし、熱もでない。それなのになぜ通う必要があるのでしょうか?」・・・・

滲出性中耳炎の子どもさんを持つお母さまからは、このように様々な質問を受けます。

8月のTea-breakにひきつづき、今月も滲出性中耳炎についてお話をします。8月のTea-breakと重複する部分もありますが、もう一度復習のつもりで読んで下さい。今回はよく御質問をいただく内容に対し、お答えします。

Q1: 滲出性中耳炎とはどんな病気ですか?
A1: 中耳(右図)という鼓膜の奥の小さな部屋に水がたまり、音が聞こえにくくなる中耳炎です。耳の穴に水がはいってしまったわけではありません。中耳に水が自然にわき出してたまってしまうのです。小学校低学年の児童のうち3〜5%はこの病気にかかっているとといわれています。痛みは比較的少なく、熱も出ません。われわれ大人がエレベーターや飛行機などで急に高い所に上がると、耳がつまった感じになるのをよく経験します。あの状態が常に続いて、耳抜きができない状態になってしまっているのが滲出性中耳炎です。

Q2: 急性中耳炎とはどう違うのですか?
A2: 急性中耳炎は、中耳に細菌感染がおこり膿(うみ)がたまる中耳炎です。この場合は高い熱を伴い、強い痛みも訴えます。ひどい場合には鼓膜が破れて耳だれが出てくることもあります。治療により熱や痛みがおさまっても、中耳がすっかりきれいになるまでには1〜2ヶ月かかります。この時期の治療を十分にしないと、滲出性中耳炎に移行してしまうことがあります。また、滲出性中耳炎で通院している子どもさんでも、ときどき急性中耳炎をおこすことがあります。

Q3: なぜ訴えがないのでしょうか?
A3: われわれ大人は、耳がつまった状態になると非常に不快に感じます。しかし滲出性中耳炎で耳がつまった感じが常に続いている子どもさんの場合は、それを普通だと思うようになってしまうのです。話すことのできない子どもさんですとなおさらです。したがって、急性中耳炎に移行することがない限りほとんど痛みは訴えません。

Q4: 聞こえはだいじょうぶなのですか?
A4: まったく聞こえないわけではないのですが、健康な子に比べると聞こえが劣ることは確かです。その日の耳の状態によって多少差があります。水のたまり具合によっては聴力がかなり低下してしまう場合もあります。そのような場合には鼓膜を切開して水を抜くことが必要なこともあります。

Q5: 原因は何なのでしょうか?
A5: 中耳と鼻の奥は、「耳管」という細い管でつながっています。気圧が変わって耳がつまった感じになったときに、われわれ大人はあくびをしたり、つばを飲み込んだりして治そうとしますね。その時、この管を使って換気をおこない、耳がよく聞こえるようにしています。子どもはこの管の働きが解剖学的に大人と異なり、大人より換気がしづらいのです。また、アデノイド* や蓄膿(ちくのう=副鼻腔炎)の鼻汁のために耳管の出口がふさがれていてもこの病気の原因になります。

アデノイド:鼻の奥にも扁桃腺と同様のリンパ組織があり、このことをアデノイドといいます。口にある、一般的に扁桃腺とよんでいるものは、医学的には口蓋扁桃といいます。どちらも6才位がもっとも大きく、それをピークにして徐々に小さくなっていきます。(ひとによっては大人になっても大きいままの人がいます。)

Q6: 子ども本人が訴えないのであれば、どのようにして滲出性中耳炎を疑えばよいのでしょうか ?
A6: 小学生ぐらいの子どもさんでは、場合によっては御本人が、
「耳が変だ。」
「耳がふさがっている。」
「きこえづらい。」
等の訴えをしてくれることもありますが、稀です。家族のひとが注意して次のような症状がある時は、滲出性中耳炎を疑い、医師の診察を受けて下さい。
●テレビに近づいて見たり、テレビの音を大きくする。
●名前を呼ばれても振りかえらない。
●聞き返しが多い。

治療に関する御質問には次回(来月のTea-break)に続けてお答えします。

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