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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2009年2月 今からはじめる花粉症対策(2009年版)

 今年もまたはじまります。春先のスギ花粉症シーズンです。皆様御存知のように鼻や目のアレルギー症状だけでなく、のどや皮膚などの症状、集中力の低下等、実にさまざまな症状に悩まされる季節です。花粉症患者さんでない方も、きっと家族や身の回りに花粉症の方がいらっしゃると思います。花粉症対策では、患者さん御本人だけでなく、まわりの方の協力も必要です。家の中のそうじや毎日の生活の中での注意点等、周囲の方もできることは患者さんに協力して下さい。
花粉症シーズンは避けて通れないことと割りきって、できる対策は早めにとり、なるべく楽にこの季節を乗りきって下さい。

■今年のスギ花粉の予想(花粉量と飛散開始日)

まず敵を知ることです。今年のスギ花粉の量は東京地方では平年並みと予測されています。しかし、この「平年並み」の量が10年前とはかなり異なります。つまり、10年前よりふえているのです。戦後各地に植林されたスギが花粉を飛ばす樹齢になっているからです。ですから「平年並み」と言われてもけっして少ないという意味ではありません。
スギ花粉が飛びはじめる時期(飛散開始日と呼ばれます)も東京では平年並みの2月中旬と予想されています。ですから2月になっても上旬であれば、まだ早めの花粉症対策を講じることができます。早めの準備はけっして無駄にはなりません。

1.はじめに、スギ花粉症の患者さんはどのくらいいるのでしょうか?

鼻アレルギー診療ガイドライン2009年版では、スギ花粉症患者さんの有病率を10年前の1998年と昨年2008年とで比較しています。
スギ花粉症有病率(全国)1998年:16.2% → 2008年:26.5%
10年間で10%以上ふえています。1998年ではおよそ日本全国で6人にひとりであったものが、2008年ではおよそ4人にひとりになっています。この数字は子どもから高齢者まで全人口に対する比率です。ためしに比較的患者さんの多い10才台〜50才台の年齢層別有病率をみますとさらに高い値になっています。

2008年年齢層別スギ花粉症有病率
 10〜19才 → 31.4%
 20〜29才 → 31.3%
 30〜39才 → 35.5%
 40〜49才 → 39.1%
 50〜59才 → 33.1%

細かい数字の羅列になってしまい申し訳ありません。つまり10才台〜50才台では3人にひとりがスギ花粉症ということです。これはとてもすごい数字だと思います。
スギ花粉症患者さんでない方でも、家族の中には必ずおひとりは花粉症の方がおられると思います。花粉症対策は患者さんだけでなく、患者さんの周囲の方もいっしょに考えて下さい。

2.スギ花粉症の治療

まず治療についてです。いろいろな治療法がありますが、整理しますと、(1)対症療法と(2)根治療法に分けられます。

(1)対症療法
スギ花粉症の症状を軽減するものです。通常の薬物(内服、点鼻、点眼等)による治療はこれになります。現在よく勧められている「初期療法」もこれです。初期療法というのは、花粉速報でも述べましたように、花粉飛散開始前から薬剤を使うというものです。この初期療法の長所は花粉速報にも述べましたように

1)症状が出現する時期を遅らせることができます。
2)スギ花粉飛散中の症状を軽くすることができます。
3)内服する薬の量や使用回数を少なくすることができます。

スギ花粉飛散開始前に耳鼻咽喉科を受診してみて下さい。
対症療法には他に手術療法も含まれます。

(2)根治療法
根本的に治すことを目的としています。根治療法には次の2つがあげられます。

a)原因抗原(スギ花粉)をとりのぞく
スギ花粉の場合、完全にとりのぞくことはできません。次の項目の「セルフケア」で少しでもスギ花粉を少なくすることについて述べます。


b)減感作療法(抗原特異的免疫療法)

スギ花粉の抽出液を注射して、身体を花粉に慣らす治療法です。注射の頻度は1週間に1〜2回から2週間に1回、さらに1ヶ月に1回というように進めてゆき、2年以上続けるというものです。治療期間が長いということの他に、花粉症の症状があるときから始めることができないという問題もあります。

3.花粉症のセルフケア
病院へ行かずとも御自分でできるセルフケアは、体内に入る抗原(スギ花粉)を少しでも減らすというものでとても大切です。

・花粉情報に注意し、花粉飛散が多い日は、できれば外出をひかえる。
・花粉飛散の多い日は窓をあけはなさない。
・外出する時には、マスクやメガネを着用し、花粉の侵入を防ぎます。
・外出から帰ってきたら、うがいや洗顔で皮膚や粘膜に付着している花粉をとりのぞきます。
・室内に入る際は、衣類に付着している花粉を落としてから入る。
・外出する際には、表面がすべすべしたコートを身につけ、けばだった、花粉のつきやすいコートは避けましょう。

4.スギ花粉症によくないもの、避けた方がよいもの
今まではスギ花粉症患者さんがやった方がよいこと、やるべきことについてお話しましたが、ここで見方を変えて、やってはいけないこと、できれば避けたいことについて述べます。

(1)アルコール
アルコールをのむと鼻の粘膜が充血し、はれます。すると鼻の中のとおりが悪くなり、鼻づまりがおきます。また、花粉症の治療薬である抗ヒスタミン剤をのんでからアルコールをのむとアルコールの吸収が速くなり、眠気の副作用が強くでるといわれています。スギ花粉症の季節はちょうど年度末で、歓送迎会やお花見など飲酒の機会が多いときですが、できるだけひかえて下さい。

(2)タバコ
タバコの煙は花粉症で敏感になっている鼻の粘膜をさらに刺激するので、タバコはひかえた方がよいでしょう。

(3)刺激の強い香辛料(こしょう、唐辛子、わさびなど)
やはり鼻の粘膜を刺激するので、ひかえて下さい。

(4)睡眠不足、過労
どんな病気にもあてはまりますが、体調不良は症状を悪化させます。よいコンディションを保って下さい。

以上、とりあえず花粉症対策でやるべきことと、やってはいけないことを記しました。どうかできることから始めて下さい。
  

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