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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2009年3月 花粉症にまつわるお話エトセトラ

 「スギ花粉」という言葉を聞いただけで鼻がムズムズしてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。いよいよスギ花粉の飛散が最も多い3月になりました。スギ花粉症の方々はそれぞれくふうしておすごしのことと思います。

今月は花粉症に関する雑学的なお話をしたいと思います。治療にあまり役立たないことも含まれると思いますがおゆるし下さい。

花粉症といえば、日本では、たいていスギ花粉症をさしますが、実は、花粉症というのは、花粉を抗原とする季節性アレルギー性鼻炎のことですので、スギ花粉症以外にも種々の花粉症があります。たとえば日本で花粉症をひきおこすといわれる植物は約80種類といわれています。また花粉症は日本だけにみられるものではなく、世界中その土地に特有な花粉が抗原となる花粉症があります。

■世界の三大花粉症

1.スギ花粉症
日本と中国のみでみられます。
長い間、スギ花粉症は日本のみでみられていましたが、1998年に中国でスギ花粉症の患者さんが確認されました。日本の三好彰先生の研究グループが確認しました。日本以外でスギ花粉症が確認されたのはこのときが初めてでした。中国では1958年〜61年の間に毛沢東の提唱で、「大躍進」という経済建設運動を進めました。経済大国に追いつけ追い越せの掛け声とともに国中の木々を伐採し、ほとんどがハゲ山になってしまいました。その結果、水害が多発し、治山、治水のために成長の早いスギが植樹されました。この経緯は日本の戦後と大変よく似ています。植樹されたスギが成長して花粉を飛ばしはじめ、スギ花粉症患者さんがみられるようになりました。

2.イネ科花粉症
主にヨーロッパ各地でみられます。イネ科のカモガヤが原因です。カモガヤは主に家畜の飼料として使われます。

3.ブタクサ花粉症
主にアメリカでみられます。アメリカではブタクサ花粉症患者が日本のスギ花粉症患者と同程度の割合で存在するといわれています。

■花粉症の歴史

花粉症と思われる症状が古代の記録に残されています。最も古い記録は紀元前1800年(3800年も昔!!)のバビロニアのシュメール人の呪文に記された鼻アレルギー症状だそうです。紀元前460年頃の古代ギリシアの医師、ヒポクラテスも花粉症と思われる病気について記録しており、体質と季節と風が関係していると述べています。

東洋でも、紀元前100年頃の古代中国で、春になると鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの症状がみられるとの記録があり花粉症が疑われます。

近代医学的な記録で最も古いものは1565年のイタリアの医師Leonardo Botallusによる「バラ熱Rose fever」で、患者さんはバラの花の香りをかぐとくしゃみやかゆみ、頭痛などの症状をおこすそうです。
さらに1819年にイギリスのJohn Bostockが春・秋の鼻症状や流涙などを牧草の干し草と接触することで発症するとし、「hey fever 枯草熱」と報告しました。のちにhey feverは「pollinosis 花粉症」と呼ばれるようになります。近年脚光をあびることの多い花粉症ですが、人類との係わりは意外に古いのです。

 

『妊娠中の治療はどうすればよいですか?』

ここで突然話題が変わって申し訳ありませんが、花粉症の妊婦さんの治療方法について述べます。妊婦さん御自身も迷われるし、つらいでしょうし、何より大変大切なことですので。

「鼻アレルギー診療ガイドライン」という治療法の指針を示す本があり、これにそって我々は治療をおこなっています。そこに書かれてあることですが、妊娠中はアレルギー鼻炎の症状が悪くなることもあります。しかし、胎児に与える影響を考え、治療は慎重でなければならず、妊娠4か月の半ばまでは原則として薬物を用いることは避けた方が安全です。

(1)まず薬物を用いない方法です。温熱療法(43℃に加熱した蒸気を吸入するサーモライザー局所温熱療法)、入浴、蒸しタオル、マスクの着用など薬を使わない方法を試みます。

(2)妊娠4か月以後でどうしても薬が必要な場合は、外用の点鼻液(インタールなど、又はステロイド)などの局所用の薬を最少量で用います。

治療法がよくわからないという場合は、どうぞ耳鼻咽喉科専門医を訪ねてみて下さい。何かお役に立つことがあれば幸いです。
  

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