補聴器を使っても雑音ばかりがうるさく聞こえてしまうということはある意味では認めざるをえません。しかしこれは「慣れること」によって克服できます。
補聴器はもともと雑音に弱い性質をもっています。雑音も、聞きたい音も同様に大きくしてしまうからです。デジタル補聴器で雑音抑制機能をもつものもありますが、これで雑音の問題が完全に解決されているわけではありません。
補聴器を使い始めた直後は、音が大きく聞こえ、うれしく感じると思います。しかし、家族との会話、テレビを見る、買い物へ出かけるというように生活の中で使い始めると、自分の耳で今まで聞いていた音との違いが気になって次のように感じることでしょう。
○音は大きく聞こえるが、今までと違って(機械的な音に)聞こえる。
○不自然な音に聞こえる。
○雑音ばかりが聞こえて、聞きたい人の声が聞こえない。
ここであきらめて補聴器をタンスのこやしにしてしまう人もいます。何度もくりかえしますが、補聴器はめがねと違って使いこなせて、本来の効果が発揮されるまでには時間がかかります。少しずつ慣れるにしたがい、これらの問題は解決されてゆきます。慣れて使いこなせるようになるには、少なくとも3〜4か月かかるといわれています。
そのためには、補聴器販売店の細やかな調整やアドバイス、はげまし等が必要です。補聴器には特にアフターケアが重要な点はここにあります。
ここでお話がややそれますが、そもそも「音を聞く」ということについての比較的新しい考え方です。
「音は耳で聞く。」
これは半分正解で、半分あやまりです。音は、耳に入ってきます。耳に入ってきた音は、外耳→中耳→内耳と伝わり内耳で電気信号に変えられ、脳へ送られ、脳で音として認識されます。
「耳で音をひろい、増幅された音を、脳で聞く。」
という方が正解です。脳は情報処理機関ですから、どの音も等しく聞くということはしません。自分にとってより必要な音を大きく感じ、不要な音はなるべく無視するようになります。
耳が補聴器に慣れるということは、言いかえれば実は脳が補聴器(の音)に慣れるということです。補聴器を使い始めたころは、聞きたい音も雑音も等しく大きくなっているので、雑音がとても気になりますが、徐々に脳は不必要な雑音を無視するようになり、しだいに雑音は気にならなくなります。これが「慣れ」です。人間の脳には驚くほどすばらしい能力が隠されています。「慣れ」もその1つです。どうかすぐにあきらめないで、「慣れる」まで補聴器を使って最終的には使いこなして下さい。
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