高齢の方がいわゆる老人性難聴のために補聴器を使おうとする場合に、御本人と家族の方々が知っておいた方がよいだろうと思われることを書いてみました。
(1)補聴器の有用性と限界を知っておいて下さい。補聴器を使うと家族や地域の人々、友人たちとよりよいコミュニケーションを築くことができるようになります。周囲の人々とのコミュニケーションを築くことができないと、家族の中で孤立したり、地域社会からひきこもってしまうことにもなりかねません。
ただ、補聴器の限界も当然あります。何回もくり返しますが補聴器を購入すると即、使いこなせるというわけではありませんので、御本人も周囲の人もあせらず、ゆっくりでもあきらめないで使い続けて下さい。高齢者の難聴では、音を大きくして聞けばよく聞こえるかというと意外にそう単純なことではありません。たとえば正常な聞こえの人でも大きい音を聞くと不愉快にひびいて聞きたくない、思わず耳に手をあてたいということがあると思います。難聴の方でも大きい音に対しては同じことがいえます。でも大きい音でないと聞こえないわけですから、よく聞こえる大きい音だけど、不愉快にひびくことはない、というところを捜さなくてはいけません。これは補聴器販売店のしごとになります。
また「音は聞こえても何を言っているのかわからない」ということもよく聞きます。先月の質問2と似た状態です。質問2のお答えのように、慣れ、リハビリテーションが必要です。さらに、わかりづらい原因のひとつとして、高齢者の難聴は高い音(周波数の高い音、たとえば8000Hzや4000Hz)から低下するために、ことばの中の子音が聞きとりづらいということが指摘されています。周囲の人が話しかける時、「ゆっくり」「はっきり」話しかけてあげるとかなり解決します。
(2)補聴器を使うときに高齢者の方では、家族の人の助けが必要な場合があります。たとえば、次のようなことは、場合によっては家族の人の補助が必要です。
○補聴器のボリュームの調節。
○補聴器の電池交換。
○補聴器の保管、清掃。
補聴器は大変小さい器械ですので、家族の方なら何でもないと考えられるこれらのことに、高齢者では意外に手間どることがあります。いずれ慣れることができますが、特に最初のうちは家族の方もやさしく手伝って下さい
(3)補聴器使用の有無にかかわらず、難聴の人に話しかけるときは
○できるだけ正面から話す。
○相手の目を見て話す。(聞く方も話す方も集中できるため)
○ゆっくり話す。
○はっきり話す。
○必要なら身ぶり、手ぶりを加える。
これだけでかなり言いたいことがしっかり伝わります。
きょう、今からできることもありますので、おためし下さい。 |