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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2011年5月 「鼻すすり」について

季節は、ゆっくり、しかし確実に進み、春から徐々に夏に向っています。
皆様いかがおすごしでしょうか。

耳鼻咽喉科では季節によって拝見する疾患が大きく変わります。「耳鼻咽喉科カレンダー」というものがもしあれば、5月はスギ・ヒノキの春の花粉症が一段落し、カモガヤ等夏のイネ科の花粉症が始まる時期です。スギ・ヒノキ花粉症が終わってホッとしている方もいらっしゃるでしょうし、またカモガヤ花粉症に悩まされ始める方もおられるでしょう。
そういう中で、今回のテーマは「鼻すすり」です。

鼻すすりは、無意識のうちにおこなわれることが多く、むしろ「癖」となっている場合が多いのです。鼻すすりは耳ぬき(鼻をつまんでいきむ)とちょうど逆の行為です。耳鼻科医としては鼻すすりはやめてほしい習慣のひとつです。理由は、鼻すすりをくり返し行なっていると鼻ではなく、耳の病気になることがあるからです。

鼻と耳(中耳)は「耳管」という細い管でつながっています。鼻すすりは鼻の内部をすすることによって陰圧を作ります。鼻をすすると耳管を介してこの陰圧が中耳に及び、中耳で形を変化させることのできる部分、つまり鼓膜を内陥させます。鼻すすりをくり返していると鼓膜がしだいに中耳側にへこみ、中耳の壁に癒着したり、(癒着性中耳炎)、また、中耳腔の陰圧のために中耳腔に水がたまったり(滲出性中耳炎)、鼓膜の内陥が進行して真珠腫性中耳炎になったりと、中耳の重大な病気になって耳のきこえが悪化することもあります。これらは一回の鼻すすりですぐにでき上るわけではありませんが、鼻すすりを何回もくり返していると、長い年月を経て、でき上ってしまうこともあります。

鼻すすりは、しない方が良い癖ですが、実はやる方にも理由があるのです。鼻をすする理由には2つあります。

(1)鼻の病気が原因の場合
(2)耳の病気が原因の場合です。

(1)鼻の病気が原因の場合

アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻かぜなどのときに、鼻汁がたまっている状態や鼻がつまっている状態を改善するために鼻すすりをする場合。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎では鼻すすりを行なう期間は数か月〜数年間と長くなってしまいます。本当は鼻をかんだ方が良いのだがめんどうくさくてつい鼻をすすってしまうということもありますね。

(2)耳の病気が原因の場合

耳のためにどうして鼻すすりをするのか、不思議に思われる方も多いでしょう。話は少し込み入ってきます。「耳管開放症」という聞き慣れない病気があります。前に述べた鼻と中耳をつなぐ耳管が通常よりも閉じにくいという病気です。耳管のはたらきは、中耳と外気の気圧の調節をすることで、開いたり閉じたりして調節しています。適当に閉じて適当に開くことが必要です。開きづらい場合は「耳管狭窄症」といいます。耳管狭窄症の状態は、飛行機の離陸、着陸の際に耳ぬきができない状態です。
逆に耳管が閉じづらい場合は「耳管開放症」です。耳管開放症の症状は耳がつまった感じがする、自分の声がうるさくひびいてきこえる等で、耳管開放症もかなりつらい病気です。体重が急に減少した場合(もちろんダイエットでも)や妊娠中になることもあります。耳管開放症では、鼻すすりをして陰圧を作ると耳管が閉じやすくなり、不愉快な症状が一時的に改善されるのです。その結果、無意識のうちに鼻すすりをくり返してしまいます。
鼻すすりをする人がみんな耳の病気になるというわけではありません。

耳管の閉まりがゆるい人の一部で耳の病気になることもあるということです。しかし、鼻すすりが習慣になり、本人も無意識のうちに鼻すすりが癖になっている場合は、鼻や耳に問題がある、つまり、何らかの鼻や耳の病気がかくれていることが考えられるので、一度耳鼻咽喉科を受診して下さい。


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