Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話
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○ 2012年2月 2012年花粉症対策
ことしも巡ってきました。花粉症の季節です。「花粉症」と聞いただけで鼻がムズムズしてくる方もいらっしゃるでしょう。自然界は不思議なことに律儀に1年たつときちっと、忘れずに、スギ花粉を飛ばしてくれます。
しかし、どうして花粉症がおきるのでしょうか?
このブラックボックスの部分を少しご説明いたします。
まず、スギ花粉が鼻から入り、鼻の粘膜につきます。これが鼻粘膜に存在するマスト細胞と出会います。マスト細胞には表面にIgE抗体がついています。花粉とこのIgE抗体が結合します。するとマスト細胞からヒスタミン、ペプチドロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出されます。これらが「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」をひきおこします。
なかなか分かりづらいと思いますが、おおよそこのような流れです。
さて、ことしの花粉症は、昨年暮れに述べましたように大変多かった昨年のシーズンに比べると少ないものの、平年なみに飛びますので、油断は禁物です。
花粉症対策としては、昨年とほぼ同じです。おさらいの意味も含めて、もう一度ここにのせさせていただきます。
■スギ花粉症の治療
アレルギー性鼻炎の治療として、次の4点があげられます。
(1)セルフケア(原因抗原であるスギ花粉をよせつけない)
(2)薬物療法
(3)手術療法
(4)特異的免疫療法(抗原特異的減感作療法)
このうち、だれでも比較的手軽に実行できることとして、(1)と(2)についてまずお話しいたします。
(1)セルフケア(スギ花粉の回避)
外出時
@花粉情報に注意する。
A飛散の多い時の外出を控える。外出時にマスク、メガネを使う。
B表面がけばだった毛織物などのコートの使用は避ける。
帰宅時
C帰宅時、衣服や髪をよく払ってから入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。
在宅時
D飛散の多い時は窓、戸を閉めておく。換気時の窓は小さく開け、換気は短時間にとどめる。
E飛散の多い時のふとんや洗濯物の外干しは避ける。
F掃除を励行する。特に窓際を念入りに掃除する。
(鼻アレルギー診療ガイドライン2009)
これらは治療の第一歩で患者さんのみができることです。
(2)薬物治療
薬物を使う治療で、まず皆さんが思いうかべる治療法だと思います。
最初に「初期療法」と呼ばれる薬の使い方をおすすめします。
花粉症の初期療法は花粉が飛びはじめる前から花粉症の薬(内服薬や点鼻薬)を使いはじめるという治療法です。たとえば、東京では1月下旬〜2月上旬から始めることが望まれます。症状が出ていないのに薬を使うことに抵抗を感じる方もいらっしゃると思いますが、次のような効果(いいこと)があります。
@花粉症の症状が始まるのが遅くなる。
A花粉症の症状が軽くなる。
B薬の量や使用回数を減らすことができる。
花粉症などのアレルギー性疾患は症状が悪化する(重くなる)と薬が効きづらくなります。しかし、症状が軽いうちに薬を使いはじめると、花粉の飛散量が多くなった時期でも症状をコントロールしやすく、その結果、そのシーズンの症状を軽くすることができます。
ここで花粉症の薬をのむときの注意です。
@花粉が飛ぶ量は雨や雪などの自然条件で減少する時期もありますが、薬の使用は途中で中断せずに、花粉飛散が少なくなる時期(スギ→4月後半、ヒノキ→5月中旬)まで継続することが望ましい。
A薬によっては眠けをもよおすことがあるため、車の運転、精密な仕事、高い所での作業などには注意して下さい。
Bアルコールといっしょに内服しない。
C眠気やだるさが強かったり、他にからだの異常を感じたときは、主治医に知らせて下さい。
(3)手術療法
くしゃみや鼻みずという症状は比較的、薬による治療が有効ですが、鼻づまりにはききづらいといわれています。手術療法は鼻づまりの強い人に、鼻閉の改善を目的におこなうことが多いです。手術の方法には次にあげるようなものがあります。
○アルゴンプラスマ手術
○電気凝固法
○レーザー手術
○その他
(4)特異的免疫療法(抗原特異的減感作療法)
これは効果は期待できるのですが、行なわれている施設が限られていることと治療に数年かかる点、稀にですが重篤な副反応をおこす点に問題があります。
ここで現在は治験段階ですが、数年後には実際に使われることが期待される治療法をご紹介します。「舌下減感作療法」と呼ばれるものです。いままでの特異的免疫療法は注射が必要でしたが、舌下減感作療法は、注射は不要で、舌の下の口腔粘膜に抗原を置いて、減感作をおこなうというもので、多くの人に期待されています。
花粉症シーズン中は、日常生活での生活習慣も大切です。花粉症の症状を悪化させる花粉以外の要因には次のようなものがあります。
@ストレスの多い生活。
A不規則な生活リズム。睡眠不足。
B高たんぱく質や高脂肪の食生活。
C排ガス、大気汚染→排気ガスなどで汚染された大気中の微粒子が免疫反応をおこす抗体を産生しやすくし、花粉症の発症を促進する。
Dアルコール→鼻閉悪化
以上2011年1月・2010年1月コラムより
残念ながら、スギ花粉症の治療法については、1年前に述べたことと現在もほとんど変わっていません。みなさまに期待されている「舌下減感作療法」も現在はまだ認可されていないので、一般的にまだできません。今しばらくおまちください。
(2)薬物療法の中ででてきた「初期療法」。これをぜひ今年こそはやってみて下さい。花粉が飛びはじめるまえから薬を使い始める。つまり症状が出る前から薬を使うという治療法です。今までやってみようと思ってもやったことのない人はぜひ今年こそ試してみて下さい。初期療法こそ早めに準備して下さい。耳鼻咽喉科で「初期療法を希望」とおっしゃっていただければ、どこでもやってもらえます。
ことしこそは早めに準備をととのえて、つらくない春をおすごし下さい。
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