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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2012年8月 溶連菌感染症について

 今月のテーマは「溶連菌感染症」です。子供が主にかかる感染症ですが、実は大人でもかかります。学校伝染病にも含まれるため、時々耳にすることもある名前だと思います。

 溶連菌は、正式にはA群β-溶血性連鎖球菌といいますが、ちょっと長いので溶連菌といいます。「溶血性」なんて気味の悪い名前ですが、これは細菌を培養する際、「ヒツジ赤血球加血液寒天培地」上で溶血をおこすという事務的なことです。

溶連菌の感染の仕方には、飛沫感染と皮膚からの接触感染があります。
厳密には溶連菌感染には次のような種類があります。

(1)咽頭炎や扁桃腺炎
(2)とびひ

ここでは(1)の咽頭炎・扁桃腺炎について述べます。

溶連菌の咽頭炎では、潜伏期間はだいたい2〜5日です。
主に2〜10歳に多く(ピークは5〜10歳)、成人には少ないといわれています。主な症状には次のようなものがあります。(これらの症状はすべて出るわけではありません)

1)咽頭炎、扁桃炎

発熱(90%以上)、のどが痛い、のどが赤い、扁桃腺にしろいものがつく(そのために口臭があることも多く、血液の混じった黄色い痰が出ることもある)

2)口蓋の点状紅斑、点状出血斑

口蓋垂(のどちんこ)を中心に赤い小さな点状の出血斑

3)イチゴ舌、全身発疹、皮膚落屑などなど

■溶連菌感染の診断

(1)A群溶血性連鎖球菌迅速診断セット

綿棒でのどの菌を採取し、検査します。溶連菌かどうか数分で診断できます。ただし溶連菌だけしか判定できません。

(2)咽頭培養検査

やはり綿棒で、のどの菌を採取し検査します。溶連菌だけでなく他の細菌も診断できます。ただし、検査には数日を要します。

(3)血液検査

他の細菌感染と同じように、白血球が増えたり、CRP(炎症の程度の数字)が上昇したりします。ASOやASKなどの抗体検査もあります。

■溶連菌感染の合併症

(1)直接的な合併症(つまりのどがはれたことによる合併症)

中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、リンパ節炎など

(2)急性腎炎

溶連菌感染後、3〜4週後に発生することが多い。突然、むくみ、尿が出なくなる、血尿や蛋白尿が出る、血圧が上がるなどの急性腎不全の状態になります。でも予後は良好で1〜2年のうち90%以上は治癒します。

(3)リウマチ熱、血管性紫斑病など

■溶連菌感染症の治療

抗生物質を10〜14日間内服することがすすめられています。溶連菌感染そのものは、抗生物質を2〜3日間内服すればおさまますが、急性腎炎、リウマチ熱、血管性紫斑病などの合併症を防ぐために10〜14日間の内服が勧められています。

■家族に対する治療

兄弟で50%、親で20%感染しており、感染者の50〜80%が発病するという報告があり、溶連菌と判断された場合には、その家族全員も抗生物質を内服するのがおそらく一番理想的でしょう。しかし、現実的には発熱や咽頭痛など症状のある人や、検査で陽性の人が抗生物質を内服することが多いようです。

■いつから学校や幼稚園に行っていいのか

学校伝染病では「抗生剤治療開始後24時間を経て、全身状態がよければ登校可能」とあります。つまり、抗生剤を内服しはじめて、24時間が経ち、発熱や発疹が治まって元気があれば登校・登園してもよいということです。

■溶連菌感染症は何度もなりますか?

A群β-溶血性連鎖球菌にもさらにいろいろなタイプがあります。そのタイプの数だけ(4〜5種類)感染する可能性があります。

■溶連菌感染症の予防

今のところ効果的な予防法はありませんが、飛沫感染などを防ぐためにも、うがい、手洗いによる予防が勧められます。

 

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