Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話
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○ 2016年8月 乗り物と関係のある耳鼻咽喉科の病気について
「夏休み」と聞くと、子どもでなくとも、なぜか心がウキウキしてしまいます。
皆様はいかがでしょうか。
今回は夏休み中ということもあり、「乗り物と関係のある耳鼻咽喉科の病気について」のお話です。
1.乗り物酔い
乗り物酔いに関しましては、2010年と2014年の今の時期にもうすでに述べてあります。今回も大体それらと同じことなのです。
人間の耳は何て精巧にできているのだろう!と感動することが時々あります。平衡感覚についてもそうです。体の動きを大きく2つに分けると、回転する動きと、直線的な動きの2つに分けられます。回転する動きは、3つの半規管(外側半規管、前半規管、後半規管)で感知し、直線的な動きは、2つの耳石器(卵形嚢、球形嚢)で感知します。それぞれ右と左がありますから、人間ひとりにつき、内耳には全部で10個の感知器があることになります。体の現在の位置や運動をしている様子というのは動物にとってとても大切なことですから、これだけの感知器が必要なのです。
でも、感知器はこれだけではなく、目から入ってくる情報や、筋肉にある感知器(深部知覚といいます)も働いています。これだけいろいろ感知器があると、それらを全て統合する場所が必要で、それが「脳」です。1つぐらい働かなくなっても、一応他の感知器がカバーしてくれますから機能的には問題ありません。でも、もし、どれも働いているのですが、情報が異なっている、つまりズレているとしたら、それを統合する脳は混乱してしまいます。すると自律神経が不安定になり、乗り物酔いの症状(冷や汗、むかつき、嘔気、頭痛など)がおきます。そして、一番大切な、乗り物酔いを防ぐ方法です。これも基本的には今までに書いてきたことと同じですが、一応列挙します。
- 十分に睡眠をとって乗る。空腹や食べ過ぎの状態では乗らない
- 不安が強いなら酔い止めを30分前に服用
- きついネクタイやベルト、体を締め付ける服は着ない
- 車は助手席、バスなら進行方向が見える前方の席へ。船は揺れが少ない中心部の、景色が見える席を選ぶ
- ゆっくり深呼吸し、リラックスする
- 本やスマホは見ず、遠くの景色を見る
- 乗っている最中は頭をグラグラ揺らさない
- 時々換気し、新鮮な空気を吸う
乗り物酔いは残念ながら小さい子どもさんに多いのですが、おとなになるまでず〜っと続くという方は少ないようです。おとなになるためのひとつの試練と考えて、親ごさんはあたたかく見守って下さい。
2.飛行機と耳と鼻
飛行機に乗る時も注意が必要です。飛行機に乗っていて、離陸や着陸の際にうまく耳ぬきができなかったという経験はありませんか?ひどい場合ですと、耳が痛くなってしまったり、目的地に着いてからも耳がつまったかんじや、きこえが悪いことが続く場合があります。
これは航空性中耳炎といって、文字通り飛行機が原因の中耳炎です。どうして飛行機にのるだけでこんなにいろいろなことが起こるのでしょうか。それは鼻の奥(つまり上咽頭)に炎症があるからです。
鼻と耳をつなぐ細い管は「耳管」と呼ばれますが、鼻側の出口が上咽頭にあります。ここに炎症がおきたり鼻汁がつまっていたり(後鼻漏)すると耳管の通り方が悪くなります。通常ですと唾液をのみ込んだり、あくびをすると一瞬ひらく耳管が、なかなかひらいてくれません。最後には鼻をつまんで「ウッ」と少し力むということをした方もおられると思います。
副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、感冒、そして飲酒などで、こういう状況になりやすくなります。ですから、たとえばかぜぎみだなという時は、飛行機に乗る前と機内ではアルコールは避けた方が賢明です。
では、もともと副鼻腔炎がある方、アレルギー性鼻炎がある方、また飛行機に乗る予定があるのにかぜをひいてしまったという場合はどうすればよいでしょうか。理想的には2週間前、できれば1週間前ぐらいに耳鼻咽喉科を受診して下さい。いろいろ検査をし、薬(抗アレルギー薬、抗生物質、抗炎症剤 等)を処方します。場合によっては鼓膜切開などの処置を行なうこともあります。
航空性中耳炎は、せっかく楽しみにしていた旅行の最中におきてしまいますし、症状も、不愉快なものです。早め早めの対策が大切です。
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