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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2022年6月 ヒアリングフレイルについて

 6月21日は夏至で1年中で最も昼間が長い日ですが、その前後でもかなり朝は早くから明けますし、夜はなかなか日が暮れません。皆様いかがおすごしでしょうか。
 今回は、あまり聞いたことのない言葉かもしれませんが、「ヒアリングフレイル」について少しお話しします。

 「フレイル」という言葉、時々耳にしませんか。似たような言葉で「ロコモティブシンドローム」あるいは短くして「ロコモ」なんていう言葉もありますよね。どう違うのでしょうか。
まず「フレイル」。フレイルという言葉はフレイルティ frailtyから来ています。
フレイルとは高齢になって、心身が衰えた状態です。しかし適切なアプローチ、つまり対応をすれば症状を改善できる可能性があります。
フレイルとは健康な状態と要介護状態の中間の状態です。

フレイルは現れ方によって3つに大きく分類されます。つまり、
  @身体的フレイル ・・・ 低栄養、運動機能障害など
  A精神的フレイル ・・・ うつ、軽度認知障害など
  B社会的フレイル ・・・ 閉じこもり、孤食など

 一方、ロコモティブシンドロームとは私たちの移動するための機能が低下してしまっている状態のことをいいます。移動するための機能とは人間が「歩く」、「作業する」など運動のために必要な身体のしくみ全体のことです。
ロコモティブシンドローム(ロコモ)が進行して自覚症状がはっきりした状態が身体的フレイルです。
フレイルの中の身体的フレイルの中の運動機能障害がロコモティブシンドロームですから、フレイルの方が広い意味をもっています。

「みんなの聴脳力チェック」の開発者である中西真一路先生により示されたのが「ヒアリングフレイル」です。「ヒアリングフレイル」とはきこえが悪くなることが原因でおこるコミュニケーションやQOL(Quority Of Life)の低下などを含めた@身体的フレイルのひとつです。
たとえば次のようなことはありませんか。
 ・話しかけても以前より反応しなくなった。
 ・外出することがおっくうになった。
 ・部屋に引きこもることが多くなった。
 ・以前よりも怒りっぽくなった。
 ・大好きだったテレビを急に見なくなった。
 ・以前に比べ会話が難しくなった。

 これらの場合、認知機能の問題ではなく、ヒアリングフレイルが原因でコミュニケーションしたくない、恥ずかしい、うまく言葉にできないという可能性もあります。つい「認知症が始まったのかしら」と考えがちですが「きこえが悪いだけ」という場合もあり、その場合はきこえがよくなるだけで生活が大分変わります。私の経験ですが、以前たのまれて高齢の入院患者さんの両耳の耳あかをとったところ、人がかわったと喜ばれました。きっと耳あかがつまってよく聞こえていなかったのでしょう。

そこで、まず自分でできるヒアリングフレイルの評価方法をご紹介します。

ヒアリングフレイルの評価方法

 3つ以上当てはまると聴力が低下しているおそれがあります。
 あなたの聞こえは大丈夫? 耳の健康チェック

□家族にテレビやラジオの音が大きいと言われることがよくある。
□相手の言ったことを推測で判断することがある。
□集会や会議など数人の会話でうまく聞き取れない。
□話し声が大きいと言われる
□会話をしている時に聞き返すことがよくある。

ある程度年齢がゆくと思いあたる事が多いことばかりですね。
3つ以上当てはまると聴力が低下しているおそれがありますのでそういう場合は一度耳鼻咽喉科を受診して詳しい聴力検査を受けて、自分の聴力が今どれくらいなのかを知った方がよいでしょう。聴力は目で見ることはできませんから、グラフであなたの聴力はこれくらいですと示された方がわかりやすいと思います。

そこでもしも難聴を指摘されたらどうしましょう。たしかに聴力はいったん失われたら、手術や投薬で改善する例はわずかです。高齢者の難聴は進行することはあっても改善することは残念ながらまずありません。
そのような場合にはまず補聴器をお勧めいたします。「補聴器はとしよりくさくていやだ。」、「補聴器を使うほどではない。」等いろいろなご意見があることは充分理解しています。しかし、現在聴力低下に対して効果がある方法といえるのは補聴器です。聴こえがあまりよくない方は早めに補聴器を使用しはじめる方がよいと思います。
どうしてももう少し大丈夫だろう、もう少し様子をみようと考えがちですが、早め早めの対応が必要です。

「試聴」といって試しに補聴器を使ってみるというお店もあります。1〜4週間使ってみて、納得してから購入すればよいのです。

ヒアリングフレイルは徐々に、ゆっくりゆっくり来ます。毎日接している方だと何かおかしいと感じづらいかもしれません。でも、たとえば先ほどあった「話しかけても以前より反応しなくなった。」は毎日接している方でないとわかりません。毎日注意深く様子を見てあげて下さい。
おそらくだれでも一度は通る道だと思います。

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