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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2023年4月 ヘッドホン難聴、イヤホン難聴

 春が来ました。ことしの春は昨年と少しだけ異なります。何が違うのかわかりますか?
そうです。マスク着用の義務がなくなったのです。人類も少しずつ新型コロナウィルス感染症を克服しているのかなと思います。あるいは新型コロナウィルスと共存する方法を手さぐりで捜しているのかもしれません。皆様いかがおすごしでしょうか。

 今回のテーマは「ヘッドホン難聴、イヤホン難聴」です。
毎日のようにヘッドホンやイヤホンで音楽を楽しんでいる方は要注意です。ヘッドホン難聴やイヤホン難聴の危険があります。私もためしに地下鉄の車内でどれくらいの方がヘッドホンやイヤホンを使っているかなと思って数えてみました。10人に1〜2名の割合で使っておられました。場所によって、時間帯によって使っていらっしゃる割合は異なるのでしょうが、大体こんなかんじです。

 2019年にWHO世界保健機関が若い人を中心に全世界で11億人がヘッドホン・イヤホン難聴のリスクがあるとしました。ヘッドホン・イヤホン難聴というのはヘッドホン・イヤホンを使ったらすぐに難聴を自覚するというわけではありません。数年かけて徐々に進行し、難聴があるとわかった時には回復が困難になっているという考えてみれば恐ろしい病気です。 毎日ヘッドホンやイヤホンを使っているだけで必ず難聴になるというわけではありませんが、ヘッドホンやイヤホンを使う条件がある程度以上になると危険性は高くなります。

 ここでヘッドホン・イヤホン難聴がおこる仕組みついて。
 皆様もよくご存知だと思いますが、音は空気の振動で、この振動が鼓膜→中耳→内耳と伝わり、内耳の蝸牛の有毛細胞まで伝わります。この有毛細胞の毛がゆれて空気の振動だった音が電気信号になり、脳へと伝わります。
 騒音、大きい音が長く続くことで、有毛細胞の毛がだんだんこわれてゆき、音が伝わりにくくなります。これがヘッドホン・イヤホン難聴がおこる仕組みです。

ではヘッドホン・イヤホン難聴の症状はどのようなものでしょうか。
これは音響性聴器障害全体にいえることです。

<耳鳴り>
耳鳴りとは周囲に音がないのに、不快な音が聞こえる状態です。キーン、ブー、ジーなどですが、これは耳が悲鳴をあげていると考えてください。数分で不快な耳鳴りがきこえなくなるなら問題ありませんが、数時間以上止まらない耳鳴りは注意して下さい。耳鼻咽喉科を受診した方が良いです。

<耳閉感(耳がつまった感じ)>
飛行機の離着陸の時やトンネルに入った時のかんじです。飛行機やトンネルでは数分で戻りますが、数時間続くようなら耳鼻咽喉科へ行きましょう。

このようにヘッドホン・イヤホン難聴といっても症状は耳鳴り、耳閉感というように「難聴」が最初に出てきません。ですからこわいのです。
また耳鳴りや耳閉感が続く場合は他にも、外耳炎、中耳炎、突発性難聴、加齢性難聴などなどさまざまな疾患でみられます。耳鼻咽喉科を受診すれば問診や聴力検査を行ってこれらを区別してくれます。
そして何年もかけておこった難聴や耳鳴り、耳閉塞感には残念ながら有効な治療法はまだ確立されていません。

 大きな音を聞いてなる騒音性難聴といえば、今までは工場、建設現場、コンサート会場など大きな音に耳がさらされて起きることが多かったのです。ヘッドホン・イヤホンは耳を密閉して全ての音が耳にひびきわたるため工場や建設現場やコンサート会場の騒音に比べて小さい音でも耳はダメージを受けやすくなります。

WHOが2019年にヘッドホン・イヤホン難聴のリスクの指針を発表しました、ヘッドホン・イヤホン難聴のリスクは、音圧(音量)×使用時間で現されています。つまり音の大きさと使用時間、いずれかが大きくても(長くても)リスクがあるということになります。
たとえば
 ・成人 80dBで1週間あたり40時間以上
 ・子ども75dBで1週間あたり40時間以上
で難聴リスクが高まります。

ここで80dBとか75dBとかあってもピンとこないかもしれませんね。
騒音(dBデシベル)の目安は次のようになっています。

 75dB・・・掃除機
 85dB・・・街頭
 90dB・・・芝刈り機
100dB・・・地下鉄車内
110dB・・・コンサート会場
120dB・・・救急車などのサイレン

騒がしい街頭や地下鉄の車内でヘッドホンやイヤホンからの音楽しか聞こえない状態は耳に負担となっています。
これらのことからヘッドホン・イヤホン難聴を防ぐには

@音量を上げすぎないこと。目安は「会話が聞きとれる」程度
A耳を休める時間を取ること。1時間に1回10分程度の休憩時間をとる。

@又はA又は両方で、音圧(音量)×使用時間を減らして下さい。
最近は出力制限のある機械もあります。これは推奨された7日間の限度を超えると通知が送信され、音量が下がります。また周囲の雑音を抑制する「ノイズキャンセリング機能」を使うと音量をあまり上げなくともよくなります。
ヘッドフォン・イヤホン難聴は今すぐ難聴になるわけではありませんが、10年、20年、30年先に自分の耳で会話や音楽を楽しむために、ヘッドホンやイヤホンを使うときは少しだけ我慢して下さい。

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