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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2012年12月 耳をすませば…

 今回のテーマは2つあります。
まず1つめは、耳鼻咽喉科の診察室で患者さんを拝見していると、五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)のうち、もちろん視覚を最も使うのですが、聴覚も意外に役立っているというお話です。
そして2つめは、来年の春の花粉予報です。>詳しくはこちらを御覧ください

 まず1つめの話題です。
診察室におりますと、目(視覚)は当然、目の前の患者さんに注がれます。しかし、耳(聴覚)は知らず知らずの間に、あちこち、極端な言い方をすれば、360°、全方向の音をひろうこともあります。ネブライザーのモーター音や、待ち合い室の赤ちゃんの泣き声などです。

しかしそこへ、ゴホンゴホンという痰がからんだ咳の音が入ってくると少しドキッとします。また、かすれた声で初診を申し込んでいる場合も少しドギマギします。なぜならおそらくそれらの患者さんたちは、咳や嗄声(させい:かすれ声)を主訴として何番目かに呼ばれるからです。耳をすますと、いろいろな情報が得られます。声や咳を聞いただけで、どのあたりにどのくらいの病変があるだろうと想像がつくのは耳鼻咽喉科だけかもしれません。たとえば血圧が高い患者さんはあたりまえですが声を聞いただけでわかるということはありません。

耳鼻咽喉科疾患でももちろん声を聞いただけではわからないものもたくさんあります。
((例)アレルギー性鼻炎)
でも声を聞いただけでわかる場合もあります。以下に例を挙げてみます。

(1)痰がからんだ咳

コンコンというよりはむしろ、ゴンゴンという痰がからんだ音がします。たいていの場合、後鼻漏があり、これが痰になってからむことが多いようです。子どもさんでは鼻汁が出ている場合に多いです。つまり前方へ鼻汁が流れてくるくらい多いと、うしろへ(のどへ)鼻汁が回って痰になることも多いのです。

 

(2)声帯ポリープ・喉頭癌

声がかすれます(嗄声)。声だけを聞いて声帯ポリープか喉頭癌かを不別することはできません。やはり内視鏡などできちんと見る必要があります。

 

(3)小児声帯結節

幼稚園ぐらいの小さいお子さんで、特に元気がよい場合、声がかすれていると小児声帯結節を疑います。子どもさんの声帯結節です。成人の声帯結節と声帯の結節の形は似ていますが、治療法が異なります。小児声帯結節は、男児では変声期前後に、女児では初潮期前後の第二次性徴期に自然治癒することが多い(9割以上!)ことが知られています。

 

(4)急性喉頭炎

かぜかなと思っていたら、急に声が出なくなった、急に声がかすれてきたなど、「急に」というのがポイントです。

 

(5)鼻声

これは病名でなく症状の名前ですが、急性鼻炎や子どもさんのアデノイドなど両側性の高度の鼻閉を生じた時によく認められます。

これらは、患者さんをじっと観察するだけで、特に器械を使わなくてもめどがつきます。お母様方と我々医師とで大きな差はありません。長く子どもさんと接しているお母様方の方が有利なくらいです。先日、6歳の子どもさんを連れたお母様が「最近いびきがひどくなってきたので、鼻の奥に鼻汁がたまっていないでしょうか。」そのとおりです。鼻の孔から鼻汁がでてくるわけではありませんが、鼻の奥(後鼻孔)に鼻汁がたまっていました。このようにお母様の方が我々よりたくさんの情報を得ていることも多いのです。お母様方もがんばって情報をなるべく集めてみて下さい。

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