Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話
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○ 2014年6月 味(味覚)について
日ざしが徐々に強くなり、夏が近いなと感じられます。気温もどんどん上がってきました。このあいだ梅の花が咲いたと思っていたのですが、もうかわいい青い実が枝についていました。
さて、今回は2007年10月の、味のお話のつづきです(2007年10月のコラムはこちら)。日本料理が世界文化遺産に登録されてから「うま味」に関しても関心が高まってきています。
味は、大きく、
- 甘味
- 塩味
- 酸味
- 苦味
- うま味
の5つの基本味に分けられます。
うま味は新しくつけ加えられた味です。2000年に舌の味蕾にある感覚細胞にうま味成分の1つであるグルタミン酸受容体が発見されたことでうま味の実在が認知されるようになりました。英語でも「umami」が通用しています。
うま味は日本だけの専売特許ではありません。東南アジアの魚醤であるナンプラー(タイ)やニョクマム(ベトナム)もうま味として利用されてきました。味覚の神経支配は、嗅覚のように嗅神経1つだけではなく、舌前2/3は鼓索神経(顔面神経の枝)が、その後ろ1/3は舌咽神経が、軟口蓋は大錐体神経(顔面神経の枝)がそれぞれ支配しています。
そして、舌や軟口蓋の味覚の比較的簡便な検査方法として、電気味覚計検査があります。電気味覚計は味の質としては、主に金属味として感じられます。刺激電極を舌や軟口蓋にあてて、通電し、どのくらい通電したら金属味がわかるかを調べます。「通電する」と聞くと、ビリっとくるのではないかと心配される方もいらっしゃると思いますが、そんなに強い電流ではありませんので御安心ください。
電気味覚計検査の良い点は、定量性が高いということで、数字ででてくるので、大変わかりやすい結果となります。先日来院した患者さんは、御自分では「味がわからない。」と言っておられましたが、電気味覚計では正常という結果でした。味という色も形も何もないものを0(ゼロ)とか10とか数値化すると、御自分でも納得できるようです。
味覚のわかりやすさ、鋭敏さとして味覚閾値(低いほど味に対して鋭敏)があり、中学性ごろが最も低く(つまり味に対して鋭敏である)<乳児・学童<成人<高齢者の順で高くなります。
つまり、高齢者では、健常者であっても閾値が高く(つまり味に対してにぶく)なります。外からは全くわかりませんが、高齢者では実は味覚も多少わかりづらくなっているのです。
味覚はある日突然にぶくなったり、鋭くなったりするものではありません。もしかすると毎日少しずつ変化しているかもしれません。「何となく味が分かりづらい」というようなことがありましたら、まずお近くの耳鼻咽喉科を受診してみて下さい。
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