Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話
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○ 2018年6月 子どもさんのハナクソについて
このところ急に気温が上がって、湿度も上がってきました。夏が近づいているんだなと日々感じます。もちろん、夏至に向かって朝の日の出の時刻はどんどん早まり、夕方の日の入りの時刻もかなり遅くなってきています。目をつぶっていても日本の夏は高温多湿ですから夏が近づきつつあることは体全体で感じられますね。皆様いかがお過ごしでしょうか。
春は幼稚園や学校の健診の季節です。そこで拝見した多くの子どもさんたちの耳・鼻・のどの中で、特に印象的だったことをお話いたします。それは、幼稚園〜小学校低学年ぐらいの小さいお子さんのハナクソの多さです。男女を問いません。ハナクソ、鼻糞という病名はありませんのでご安心を。ただハナクソが多いお子さんは、おそらく自分でハナクソを毎日毎日せっせととっているのだと思われます。誰でも一時期、子供のころにせっせとハナクソをとったことがあると思います。じつはこの欄でも以前ハナクソについてお話したことがあります。2006年3月ですから12年も前のことになりますが。そこでは、
鼻クソの成分は、(1)吸気中のゴミ、(2)鼻の入口の皮膚の皮脂腺からの分泌液と、(3)鼻の奥から出てくる粘液の3者がまじったものです。ほこりっぽいところでは(1)がふえ、鼻のいじりすぎでは(2)がふえ、副鼻腔炎等で鼻汁が多いと(3)がふえます。いずれの場合も鼻クソはふえます。
と書きました。要するにハナクソがゼロになることはないわけです。
1日1回〜2回とるのは仕方ありませんが、それ以上とると、鼻の入口を傷つけやすくなります。そして鼻出血の好発部位であるキーゼルバッハ部位(Kiesselbach部位)も鼻の入口にあります。キーゼルバッハ部位は鼻中隔(左右の鼻の間の隔壁)の前方、鼻の中に入ってすぐの所にあります。ここは細い血管がたくさん走っているところで、とても出血しやすい部位です。幼稚園や小学校の健診の問診表に「鼻血が出やすい」と記入されるお子さんはたいていキーゼルバッハ部位からの出血です。キーゼルバッハ部位を頻繁に傷つけていると次第に出血が止まりづらくなっていきます。初めのうちは鼻をつまんで2〜3分すれば止まっていたのに、鼻をつまんで10分たってもまだ出血が続いているとなると大変です。すぐに耳鼻咽喉科へ行きましょう。子どもさんの場合はこの様に頻繁なハナクソほじりから鼻出血へ至ることが多くみられます。ただおとなの鼻出血は事情が違って、同じキーゼルバッハ部位からの出血でも、鼻内を全く触っていないという場合もありますし、キーゼルバッハ部位以外からの出血もありますし、また、いわゆる「血液サラサラ薬(ワーファリン、バイアスピリン等)」の影響の場合もありますし、別の病気が隠れている場合もあります。
さて、子どもさんのハナクソですが、ハナクソをとると鼻内がスッと通りがよくなったような気がしますが、すぐに新たにまたハナクソがついてしまいます。ハナクソは鼻の入口の粘膜のかさぶたと考えいただけるとよいと思います。
たとえば、手や足の皮膚についたカサブタを早いうちにとると、またカサブタが同じようについてしまいます。以前よりも大きいカサブタがつくこともあります。また、早めにとると出血してしまい、黒っぽいカサブタがつくこともあります。だから、ゆっくり時間をとってカサブタが自然に取れるまで待った方が賢明です。
鼻内のハナクソも同じで、できれば自然に取れるまで待ってからの方が楽に痛くなくとれます。でも子どもさんたちはそこまで待つことができずに早めに鼻の中に指を入れてとってしまします。するとまた大きなハナクソがついて・・・・のくり返しとなります。鼻出血が出ている場合はハナクソをとることはすぐやめてもらうほうが良いですが、そうでなければ経過観察ですね。おとなになってから、1日に何回も鼻をほじるということはまずありませんので、いつか鼻をいじらなくなります。他にも色々とやることができてきて、自分の鼻への興味がなくなってくるからでしょう。
先ほど「ハナクソは病名ではない」と書きましたが、ハナクソがたくさんたまるような状態を「鼻前庭炎」や「鼻入口部炎」と表すことはあります。鼻の入口の炎症です。炎症はない方が良いので、くれぐれもはなのいじりすぎはしないようにお願いいたします。
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